ブログランキング

オピニオン 株式投資

【改訂版】短期スイング概論~銘柄選定から売買ポイントに至るまで体系的に解説~

2023年7月6日

※本記事は過去に別媒体にて限定公開(執筆公開は2018年11月)していた「短期スイング概論」の改訂版です。改訂版と言っても、最後に加筆したのは数年前。当時と比べて多少の変化はあれど、考え方の根本は変わっていません。最後まで読んで頂けると参考になる情報があると思います。トレードスキル上達の一助になれば幸いです。

 

【本編】本記事で述べていることは、私が相場に取り組む際に大事にしている基本的なスタンスである。実際には、ここで述べたことを相場環境によって若干アレンジし、具体的な場面ごとに適用している。ただし、考え方のコアな部分に変更はない。また、本記事は初心者の方を想定読者として書いている。分量の関係上、説明を簡略化した部分もあるが、短期スイングにおける私なりの考え方をコンパクトにまとめてみた。考え方を伝える以上、一般的な記事と比較してかなりの分量となっている。その点をご理解した上で、本記事を読んで頂けると幸いである。

 

タイトルに「短期スイング概論」とある通り、それぞれの場面において、基本的な考えを中心に述べていく。時折、用語の説明もする予定だが、それよりも根本的な思考について掘り下げるつもりである。なお、体系的に説明をする関係上、思考の妨げになる記述は意図的に省いている。それは知識の紹介ではなく、あくまで思考法に力点を置いているからである。

 

また、本記事は「読み物」としての立ち位置なので、図解を交えて説明することはしないつもりである。その点も予めご了承いただきたい。では、早速本題に入ろう。

 

0.はじめに

株取引を上達させる為には、「自分に合ったトレード手法を確立させることが重要である」と言われる。これはある意味では当然のことであり、闇雲にトレードをしても思うような結果は出ない。戦略的にトレードをしなければ、単なるギャンブルに終始してしまう。では、「自分に合ったトレード手法」とは何だろうか。その答えは一意的には定まらない。

 

人それぞれ適性は異なり、デイトレードを得意とする人がいれば、長期的なスパンで割安な銘柄にじっくりと取り組むことを得意とする人もいる。時間軸が異なるだけでも、トレード手法は多岐にわたる。特に初心者の場合は、知識と経験が不足している分、どれが自分に合ったトレード手法なのかよく分からないはずである。

 

書店に並ぶ株式投資の本を手に取ると、初心者向けのアドバイスとして「身近な企業に投資しよう」などと書いてある。自分の生活に身近な商品やサービスを扱う企業ならば想像力が働きやすいということなのだろうか。個人的な意見を言えば、これは少々不親切な回答ではないかと思っている。身近な企業だからといって、業績面まで考え、そこから将来の株価まで想像することは初心者にとっては容易なことではないからだ。

 

企業の財務諸表を正確に読み解く為には会計学についての基本的な知識が必要であり、チャートを分析する為にはメジャーなテクニカル理論について学習しなければならない。手元に潤沢な資金があれば、面倒なことを考えずに適当に株を買って、適当な場面で売るという「横綱相撲的な投資法」で臨めるのかもしれない。

 

ただ、大抵の投資家は元手となる資金はあまり多くないのが一般的だろう。そして、少ない元手をなるべく短期間で効率的に増やしたいと思っている。そういった観点からは、「身近な企業に投資しよう」という回答は何も語っていないのに等しいのである。では、どういった企業に投資すれば良いのだろうか。

 

私の回答は極めてシンプルである。それは「時間軸を短めに設定し、業績の進捗率が良く、日足・週足のチャート形成が綺麗な銘柄に投資すること」である。こういった銘柄はトレードする際のリスクを低く抑えられるのが大きなメリットだ。もちろん、初心者の段階でそういった銘柄を効率的に探すのは難しいだろう。

 

そこで、銘柄選定からエントリーポイント、そしてエグジットやロスカット基準に至るまで、一連の流れを体系的に記述したいと思う。ただし、今回の記事では、目新しい知識は登場しない。それよりも、基本的な知識を組み合わせ、それをマーケットの中でどのように適用させるのかに力点を置いている。

 

トレードにおいて最も重要なことは、「目の前の現象をできるだけシンプルに眺めること」であると思っている。株取引においては、複雑に見える現象を複雑に読み解くことはあまり実益があるとは言えない。マーケットを支配するのは人間心理。分かりやすい流れにしか人は動かない。そうした基本的な心理を知ることの方が大いに役立つように思う。今回の記事ではそういったことを踏まえて、項目ごとに概論を述べたいと思う。詳細な説明はあえてしない。あまりに細かな議論に立ち入ると、かえって頭が混乱するからである。

 

初心者の場合は大まかなフレームワークを早めに理解する方が理に適う。個別具体的なことは実践の中で解決する方が良いだろう。では、具体的に見ていく。

 

第一章 短期スイングでは「成長株(=グロース株)」に投資が基本原則

株取引で最初に直面する問題は「どの銘柄を選ぶべきか」だろう。銘柄選定は非常に難しい問題である。銘柄選定といえば、四季報を片手に自分なりに良いと思った銘柄をピックアップし、それをリスト化して実際に取引する銘柄を決定するというのが一般的である。

 

確かに、これは一つの有効な手段だ。しかし、初心者の段階で四季報に掲載されている内容を正確に読み解き、それを基に取引対象とする銘柄を選定するのはなかなか大変な作業だろう。決算書の細かな数値を読み解くには専門的な知識が必要となる。ただ、初心者の段階から全ての知識を網羅するのは現実的ではない。

 

それよりも最初は重要な点に絞って理解し、それ以降はトレードを通じて適宜必要な知識を補っていく方が効率的だろう。なので、最初の段階では四季報を読む際には見るべきポイントを絞りたい。そして、四季報を読み解くことよりも重要なことは、短期スイングでは「成長株(=グロース株)」に投資する方がリスクが低いということである。ここで一口に銘柄と言っても、その種類は多岐にわたる。中には投資対象としてはリスクの高い銘柄も存在する。

 

例えば、低位株(=株価が相場全体の中で相対的に低い銘柄。通称、ボロ株)や仕手株(=投機筋によって人為的に株価操作されている銘柄)などが挙げられる。こういった銘柄はチャートが不安定であり、時間軸に細心の注意を払わなければ大ケガをしてしまう。初心者が安易に取り組むのはかなり危険だろう。そこで、こういった銘柄はある程度場数を踏んだ後で挑戦することをオススメする。以上の点を踏まえて、短期スイングでは「成長株」に投資することを基本原則とする。

 

では、どうやってそういった銘柄を発掘するのだろうか。その手順についてこの章では説明したいと思う。

 

第一章 その① 「決算書」では売上高と経常利益の推移に注目

まず最初に、「成長株」とは何かについて簡単に説明しよう。成長株とは、端的に言うと「売上・利益がともに増加傾向にあり、今後も増収・増益が見込まれる銘柄」のことである。成長株とはその名の通り、現在進行形で業績面で成長しており、なおかつ将来性のある銘柄と言える。

 

株価は過去の業績に基づいて動くものではなく、将来の業績を織り込んで推移するという特徴がある。したがって、将来性のある銘柄でなければ投資する妙味は生まれないのである。短期スイングではリスクをできるだけ抑えたトレードを念頭に置いている。この点から、業績面からも上昇トレンドを描いた銘柄を選定する方が賢明だと考えている。

 

そこで、決算書を眺める際にも、売上高(=企業が商品を販売したり、サービスを提供したりすることで得られた収益の合計数値)と経常利益(=本業以外の事業も含め、日常の経済活動によって得られた利益)に注目する。初心者の段階では、とりあえず両者の数値が毎年増加傾向にあることを確認するだけで良いだろう。そして、特に当期・来期も増加予想であることが重要である。大まかに直近3年にわたり、右肩上がりの成長(目安は+10%以上の成長率)であることを確認したい。それは前述の通り、株価は基本的に将来の業績を見据えて推移するからである。業績が右肩上がりであれば、相関的にチャートも右肩上がりになる可能性が高いのである。

 

次に、銘柄選定以上に重要なチャートについて述べていこう。

 

第一章 その② 銘柄選定以上にチャートの形状を重視

結論から言うと、銘柄選定においてはチャートの形状が何よりも重要である。これは、短期スイングにおいては最も大事にしたい基本原則だ。チャートの形状は投資家心理を反映している。例えば、チャートが右肩上がり、つまり上昇トレンドを描いている銘柄なら、それはその銘柄に取り組む大多数の投資家が「買い目線」で眺めている証拠だと言える。

 

投資家の中には、チャートは過去の投資家心理をプロット化したものであり、今後の値動きを予測する上ではあまり役に立たないという意見がある。確かに、これについては一理あるが、チャートの形状が小汚いと新たな買い手は出現しにくいのも事実である。実際、チャートの形状が綺麗な方が新たな買い手は出現しやすい。それは見た目が与える印象がシンプルである分、売買決定をする際の心理的ハードルが低くなるからだろう。

 

これらを理由に、短期スイングではチャートの形状を重視する。そして、本記事では業績面で上昇トレンドを描いている銘柄を選定する方が損失リスクは低いという立場をとる。ここで、一つ注意しておきたいことは、株価は将来の業績を織り込むという性質を持っているので、すでに急騰・急落している場合は基本的に手出し無用ということである。

 

この場合、チャートを見れば鋭角に上げたり下げたりしているのが良く分かる。業績面よりもチャートの形状を優先するというのはこういう場面で役に立つのである。かりに業績面が好調でも、すでにチャートの形状に織り込まれている場合は取引対象から外して様子見のスタンスをとる。以上の点から、銘柄選定以上にチャートの形状に留意すべきという結論に至る。そこで、どういった点に留意したら良いのだろうか。

 

後述するが、短期スイングの基本はトレンドフォロー(=順張り)である。そして、上昇トレンドを描いている銘柄を扱うことを原則とする。初心者が失敗する典型的なパターンは、カウンターフォロー(=逆張り)に挑戦してしまうことにある。株価だけに注目し、「値ごろ感」で安易に飛びついてしまうのである。

 

株取引をバーゲンセールに参加しているのと同じ気持ちで取り組むと痛い目に遭う。本当に需要があれば、値段が高くても買い手はつく。株価も同様で、結局は需要と供給のバランスで成り立っているのである。需要が高ければ株価は上がる。自分が「買いだ」と思うのではなく、マーケットの参加者が「買いだ」と思わなければ株価はダイナミックな動きを見せない。だからこそ、投資家心理が反映されたチャートの形状を重要視するのである。

 

ここで、本記事における短期スイングとは「ある特定の短い時間軸を切り取って、ボラティリティ(=価格の変動率。つまり、値幅のこと)を重視する手法」と定義する。業績面とチャートが上昇トレンドを描き、なおかつ今後もトレンドが継続する見込みのある銘柄に取り組むことが利益を得る上での前提条件となるのである。そのことを念頭に置いて、短期スイングで扱う銘柄を選定しよう。

 

第二章 チャート分析は短期スイングにおける「本丸」

短期スイングにとって「本丸」となるのはチャート分析である。チャート分析に最も時間を割くべきであると言っても過言ではないだろう。よくある勘違いに、「業績が右肩上がりなら、株価も右肩上がりになるはずだ」というものがある。これは特に初心者の時に犯しやすい間違いである。

 

株価は将来の業績を織り込んで推移していくものであると述べた。これは正確に言うと、半分は正しいが半分は間違っている。確かに、継続的に好業績の銘柄のチャートは右肩上がりに推移していくことが多い。ただ、それは「長期的に見れば」の限定付きであり、短期的には乱高下している場合も少なくない。

 

短期スイングにおいては、売買のタイミングを最も重視する。業績が良いというただその一点で売買するのはハイリスクだろう。そういう意味では、企業の業績を分析する能力に長けた投資家でも投資成績が振るわないのは、チャート分析を軽視している点にあると言える。

 

適正株価は最終的には業績に近づく」というのは一つの事実だが、それがいつそうなるのかは誰にも分からない。分からないものに大事な資産を投資するのは本末転倒だろう。短期スイングではこういった点に留意し、資金拘束のリスクをなるべく抑えつつ、着実に利益を上げることに力点を置いている。そういった点を踏まえると、今現在の株価の推移を表しているチャートを重視するのは当然の帰結だと言える。

 

この章では、実際にどうやってチャートを利用した売買を行っていくのかについて説明する。ただ、チャート分析についても見るべきポイントを絞って解説していく。専門的な用語を多用して複雑に説明してもあまり意味はない。細かな知識はベースとなる基本的な考えが身についてからでも遅くはないだろう。

 

第二章 その① トレードの基本はトレンドフォロー(=順張り)

まず最初に、トレードの基本について述べておこう。短期スイングにおいては、トレンドフォロー(=順張り)を基本とする。トレンドフォローとは、株価が上昇トレンドを描いている時に買いのスタンスで臨み、トレンド転換(=下降トレンドに移行)した時に売却するというトレード手法である。流れに沿った売買をするので初心者にも分かりやすいのが特徴である。

 

トレンドフォローの反対にカウンターフォロー(=逆張り)というものがある。これは、株価が大きく下落した局面で、後に反転することを期待して買いを入れることをいう。この手法は特に中級者以上に好まれるが、ここでは推奨しない。というのは、逆張りは流れに逆らったトレード手法であり、どこで反転するかの予測が難しいからである。

 

もちろん、場数を踏めば後述するテクニカル指標を駆使して反転ポイントを見極めることはある程度可能となる。しかし、短期スイングにおいては「リスクを最小限に抑える」ことを主眼に置いている。したがって、初心者にとって分かりやすいトレンドフォローを採用する方がリスク管理という観点からは最善であると言えるのである。

 

実際、個人投資家の多くが失敗する原因の一つに、安易な逆張りをすることが挙げられる。それまで高値圏で推移していた銘柄が反落し、株価的に安くなったところでつい手を出してしまうのである。こういった「値ごろ感」だけで売買するのはなるべく避けた方が良いだろう。「ここまで下げたら流石に反発するだろう」という目論見は大抵外れる。購入した時点から更に下落スピードを速めるのは良くあることである。

 

一般に、株価は上昇スピードよりも下落スピードの方が大きい。上昇トレンドを描く銘柄でも短期的に見れば乱高下を繰り返す。そして、売りが出ても買いが相対的に優勢なので上昇トレンドを描くのだ。反対に一旦天井をつけると買い手不在の状況となり、一気に売りが優勢となる。買いがそれまで続いても、それは将来の売り圧力となることを意味する。したがって、売りが売りを呼ぶ展開となり、下落する際のスピード感は必然的に増してしまうのである。こういった点を踏まえると、上昇トレンドに沿った売買をする方が初心者にとっても判断の猶予があるので安心だと言えるだろう。

 

では、実際にどうやって売買するのかについて次で説明していく。

 

第二章 その② 日足と週足のチャートはセットで眺めること

チャート分析をする際には、日足と週足のチャートをセットで眺めることが基本である。他に月足もあるが、これは時間軸が長めに設定されているので、日足・週足よりは優先度は下がる。ここで、トレードの時間軸について簡単に述べる。まず、短期スイングにおいては「2日~2週間程度」をマーケットにおける滞在期間とする。

 

スイングトレードはデイトレードよりも時間軸は長いが、正確に定義することは困難である。株関連の本を参照しても、時間軸の上限は「数週間から数か月程度」と定義づけは様々だ。したがって、ここでは便宜的に「2週間」と設定する。この上限に合理的な根拠を見出すのは難しいが、2週間程度の時間軸であれば地合いの影響をさほど考慮することなくトレードに臨むことができる。

 

もちろん、後述するようにトレンド転換するまでは同じ銘柄を追っていくので上限は更に伸びることはある。ただし、その場合でも予め時間軸を設定するほうがメリハリのあるトレードをすることができ、精神衛生上も良い。トレードにおいては、資金拘束されてしまうリスクをできるだけ排除することが望ましい。マーケットに長期間滞在すると、それだけ資金拘束のリスクが高まるからだ。

 

ちょうど天候と同じように、相場においても大局的な流れが存在する。同じような調子で漫然とトレードしていると急な天候の変化(=地合いの悪化)によって、思わぬ損失リスクに直面してしまう。短期スイングは、勝負すべき局面にだけ勝負し、あとは静観の立場を守る手法とも言える。流れに逆らったトレードはしないのが鉄則なのである。以上の点を踏まえると、チャートを分析する際は、日足と週足の二つの時間軸で事足りると言える。

 

次に、この両者をセットで眺めるメリットについて述べる。大抵、チャートを分析する際には日足をベースに考える投資家は多いだろう。チャート分析と言えば、日足チャートを中心に説明されることが多いからである。しかし、週足とセットで考えることでより精度の高い考察が可能となる。

 

銘柄選定の際に、業績面で上昇トレンドを描いている銘柄を選ぶことを推奨した。こういった銘柄は業績に対する期待値が株価に反映されている場合、週足が緩やかな上昇トレンドを描いていることが多い。それはつまり、当該銘柄に参加している投資家の多くが一定の時間軸を設定し、買い目線で眺めているのだと判断できる。したがって、日足と週足がともに緩やかな上昇トレンドを描いている銘柄はトレードするリスクは相対的に低いと言える。そういった意味でも、両者をセットで眺めることで得られるメリットは大きいのである。

 

では、実際に日足・週足のどこを見てトレードするのかについて実践的な話に移っていこう。

 

第二章 その③ エントリーポイントとロスカット基準を設定する際の注目ポイント

【ポイント①】 移動平均線でトレンドを把握。水平ラインで「節目」を意識

ここまで説明してきた多くのことは、既に色々な書物で言及されているものである。もちろん、実際のトレードにおいて必要な部分だけを抜粋し、表現内容をアレンジして体系的に記述している。知識の多さに比例してトレードが上手くなるのではない。理屈でカバーできるのは全体の6割程度だと言ってよいだろう。あとは、実際のトレードの中で勝負勘を身に付けてトレードスキルを向上させていく。

 

何事においても、ルールだけを学んでも上達しないのである。基本的なルールを理解したら、あとは実践あるのみだ。「型」を知らなければ型破りな行動を取ることはできない。その「型」となるものをここで提示していきたいと思う。短期スイングに限らず、多くの投資家が悩むのは「どこで買って、どこで売るのか」だろう。これについては「絶対にこれだ」と言える方法はないのだが、低リスクで効果的な方法は確実に存在する。それについて述べていこう。

 

まず、エントリーポイントとロスカット基準をどこに設定するのかについてだが、これは移動平均線と下値支持線・上値抵抗線を基準に考える。ただ、下値支持線と上値抵抗線には一つ注意すべき点がある。それは、両者はともに水平のラインを意識するということである。一般に、下値支持線と上値抵抗線は斜めのラインが多く、トレンドを把握する為に引かれる。ただ、実際に引いたラインが本当に機能するかどうかは確証が持てない。

 

いわゆる「ダマシ」も多く存在するので、機能性の観点からは、あまり実用的であるとは言えないだろう。その点、高値と安値を利用した水平ラインは「節目」を見るには非常に有効である。実際、水平ラインを意識したトレードは「節目」が見つけやすく、下値支持線や上値抵抗線として意識されることが多い。後述する「酒田五法」との相性も良く、ローソク足の配列とセットで見ると、トレードの戦略が立てやすい。よって、水平ラインはシンプルかつ実践的なラインであると言える。

 

移動平均線については、日足では5日線と25日線、週足では13週線を参考にする。短期スイングにおいてはこの3つの時間軸で十分である。移動平均線はトレンドの大まかな流れを把握するのに役立つ。そして、多数の投資家が実際に参考にしている。チャートを見る際は、多数の投資家が参考にしているであろう指標に着目することが重要である。その点から見ても、移動平均線を活用しない手はない。

 

ここで、「上値予想をすることに意義はあるのか?」について一言述べておこう。投資家の多くは株価がどこまで伸びるのかに最も大きな関心を抱く。ただ、上値を正確に予想しようとすることは現実的とは言えない。確かに、株価はEPS(=Earnings Per Share 「一株当たりの純利益」)×PER(=Price Earnings Ratio「株価収益率」)で計算されるので、企業の予想EPSとその業界の平均PERから大まかな予想は可能である。

 

しかし、株価を決定づける最大の要素は需給である。需給が良好でなければ、こういった計算は絵に描いた餅になってしまう。したがって、上値の予想は参考程度に留めておくべきだろう。それに対して、下値の予測は短期スイングにおいては非常に重要なポイントとなる。短期スイングにおいては、できるだけリスクの低い位置でエントリーすることを重視する。そのリスクを計算する上で、下値支持線・上値抵抗線というのは大きな役割を果たす。

 

上昇トレンドを描いている銘柄が下値支持線で反発すれば、それは「押し目」となり、上昇局面での買い場となる。ちょうど、階段の踊り場のようなイメージであり、株価的には小休止の状態である。ここで、実際のチャートを例に具体的なイメージを持ってもらおう。

 

【具体例】 プレミアグループ(7199)のチャートで具体的に考察

プレミアグループ(7199)の日足チャート(分割前)

 

これはプレミアグループ(7199)の日足チャートである。移動平均線は上から5日線・25日線の並びで上昇トレンドを描いている。ブログ「Mr.Kabuskyの投資論」(現在は改称)で当該銘柄についての分析を行ってきた。実際にエントリーポイントについて言及したのは8月30日以降のことである。ここで下値支持線と上値抵抗線をどう扱うについて簡単に説明する。8月30日に4265円をマークした後、株価は下落基調になった。エントリーポイントを考える際は、どこが下値目安として意識されるのかに注目する。

 

時間軸を少し後ろにずらすと、3835円(6月15日)と3770円(7月26日)が目に入る。これは当時の高値であり、それぞれを結んだ線を上値抵抗線(水平ラインとして扱う。もっとも、実際の場面では厳密な水平ラインは必要ない。3770円~3835円の幅を持った水平ラインとして扱うことで十分)である。3770円をマークした後は、前回高値の3835円手前で失速している。これはダブルトップと呼ばれるもので、通常は一旦天井をつけたサインとして認識されている。実際、8月13日には3040円をマークしており、この下落基調の中で「値ごろ感」だけで購入してしまうと含み損になってしまう。

 

短期スイングにおいてはこういう局面では手出し無用とするのが鉄則である。日足チャートに戻ると、3040円をマークした後に急騰している。ここでようやくエントリーポイントについて真剣に考えることになる。仮にこの局面でエントリーするなら、3835円を明確に上抜けたところをポイントにすべきである。上値抵抗線はチャート上における上値予想の一つの目安となる。実際、上値抵抗線は心理的な節目として意識されやすい。

 

3835円を明確に上抜けたならば、心理的な壁がなくなるので新たな買い手が出現しやすい。チャートからエントリーポイントを探る投資家は、上値抵抗線を明確に突破するかどうかに注目する。上値抵抗線を明確に突破すれば、そこからもう一段上のステージに移行する可能性が高くなる。そして、上値抵抗線だったラインは次のレンジ(=範囲)においては下値支持線として機能する。上記のチャートで言うと、3835円を明確に突破すれば、そのラインが今度は下値支持線として機能するということになるのである

 

実際、3835円を突破してからは上げ足を速めている。これは心理的な節目を突破したことで上値を追いやすくなったのだろう(もちろん、実際には価格帯別出来高などを参照して上値が軽いかどうかの判定を行う。プレミアグループの場合は3835円を突破すれば上場来高値を更新する局面であり、上値は必然的に軽かったと言える)。ここで、4265円をマークした後に反転した理由について軽く説明しよう。

 

ここまで移動平均線と下値支持線・上値抵抗線について述べてきた。チャートを分析する際はローソク足の組み合わせによって反転・反落ポイントを予想できることも基本的な知識として押さえておきたいところである。ローソク足の組み合わせによって相場の流れを把握する手法に「酒田五法」と言われるものがある。これは江戸時代の米商人である本間宗久(ほんまそうきゅう)によって考案されたテクニカル分析の一種である。米相場の投機で莫大な利益を得た手法だが、現在の株式市場でも愛好者は多い。現代でも十分に通用するテクニカル分析であると言えるだろう。

 

その酒田五法で言うと、4265円をマークした翌日に、前日の大陽線の実体部分内で陰線が出現している。これは「陽の陰はらみ」と呼ばれるローソク足の組み合わせであり、高値圏で出現すると反落のサインを示唆する。この原則通り、その後は下落基調に転じた。酒田五法については、特に底値圏での反転サインと、高値圏での反落サインを示すローソク足の組み合わせについては最低限頭に入れておきたいところである。

 

閑話休題。4265円をマークした後に、下値目安となるのが3835円と3770円を結んだ線である。最初は上値抵抗線として機能していたが、3835円のラインを突破してからは下値支持線として機能すると述べた。したがって、4265円をマークした後に反落してからは、このラインで下げ止まるかに注目すべきだろう。下値目安としては3770円~3835円のラインを想定する。相場格言で「頭と尻尾はくれてやれ」というのがある。これは底値と高値を律儀に追うことを戒める格言だが、下値予測をする場合もあまり厳密に考えない方が良いだろう。

 

一応のラインは想定するが、大事なのは「下値で即座にエントリーするのではなく、下値から反発したところでエントリーすること」である。これは注意しておきたいポイントだが、エントリーする際は反転したことを「確認」することが重要である。チャートで言うと、3790円(9月18日)をマークした後に反転を確認してからエントリーするのである。

 

ここまでエントリーポイントを中心に述べてきたが、ロスカット基準についても同様の考え方をする。エントリーポイントと同じく、ロスカット基準も下値支持線・上値抵抗線を組み合わせた「節目」を意識する。上値抵抗線を明確に突破し、もう一段上のステージに移行したら上値抵抗線は下値支持線として機能すると述べた。ロスカット基準についても、下値支持線を明確に割ったらロスカットを実行するのが原則である。

 

エントリーポイントとロスカット基準をセットで考えるメリットは、両者が同じラインを「節目」として意識している点にある。仮にロスカットする状況に至っても、それがエントリーポイントに近接したラインであれば損失リスクを最小限に抑えることができる。こうした視点はリスク管理の面で非常に有効であり、初心者にとっても分かりやすい指標となるので参考にしてもらいたい。

 

【ポイント②】 「ダウ理論」は「節目」を意識したトレードと親和性の高い理論

プレミアグループ(7199)のチャート分析で、エントリーポイントとロスカット基準の設定方法について具体的に考察した。その際、高値・安値に着目し、それらを水平に結んだラインを「節目」として意識すべきことを述べた。今回はこういった「節目」を意識するトレードの基になっている考え方について簡単に説明しよう。特に、エントリーポイントやロスカット基準を設定する際に応用できる「ダウ理論」について述べていく。

 

まず、「ダウ理論」とは19世紀終わりにチャールズ・ヘンリー・ダウが考案した「平均株価」という株価動向を評価するための理論のことを言う。株価は景気の良しあしによって変動する。ただ、個別株に限定してみると、必ずしも一対一対応ではなく、好景気でも株価が下落したり、不景気でも株価が上昇したりする。それを「平均株価」という概念を導入すると、景気と株価の関係が一対一対応になりやすく、相場全体の流れを知る上で非常に便利な指標として利用されるようになったのである。それは「ダウ平均株価」として今なお有名である。

 

「ダウ理論」には6つの考え方が集約されているが、ここでは個別株のチャートを見ていく上で有益な一つの考えを紹介する。それは「トレンドは明確な転換シグナルが発生するまでは継続する」という考えである。トレンドは明確に転換するまでは一定期間継続する。投資の基本であるトレンドフォロー(=順張り)ではこの規則性を意識することが非常に重要になるのである。

 

「ダウ理論」では上値抵抗線と下値支持線を意識したチャート分析がある。別名「レジスタンスライン」や「サポートライン」などと呼ばれる。ただ、トレンドフォローをする上で最も見るべきポイントは下値支持線である。確かに上値を見ることも重要だが、それは需給のバランスによって変わっていく。買い手が優勢になれば上げ足は速まるが、それは「ダウ理論」以外の指標も併せて見なければ予測することはできない。

 

「ダウ理論」は押し目を推測する上で大いに役立つ。もちろん、価格帯別出来高や一目均衡表、ボリンジャーバンドなども併せて見るべきだが、節目を見つけるという観点からは「ダウ理論」が最も簡便で有効に機能する。プレミアグループでのエントリーポイントとロスカット基準の設定は、「ダウ理論」の発想を参考にしている。相場に参加する人間の多くがどのポイントを意識しているかは、「ダウ理論」を利用すれば比較的容易に理解できるのである。

 

例えば、上昇トレンドが発生している銘柄で下値支持線で反発していることが過去のチャートの流れから推測できれば、そこが押し目になるだろうと予想することができる。下値目安を予想するときは「自分」が望んでいるポイントではなく、「他の投資家」が意識しているであろうポイントを探る方が合理的な判断を下すことができるのである。「ダウ理論」は他にも色々な考え方を内包した理論だが、上記のポイントを意識するだけでも、「値ごろ感」で買うような感覚的なトレードをすることが少なくなるだろう。それはつまり、損失リスクを最小限に抑えた冷静なトレードに繋がるのである。

 

【ポイント③】 利食いポイントは「過熱感」を示すテクニカル指標を参考にする

ここで利食いポイントについても触れておく。上昇トレンドにある銘柄でも、いつ・どのラインで利益確定すれば良いのか判断に悩むところだろう。実際、経験値が高い投資家でも天井で売ることはなかなか難しい。そこで、一応の目安として、利食いポイントを設定する際に見るべき指標について述べておく。利食いポイントを設定する際には、「過熱感」を示すテクニカル指標を参考にするのが良いだろう。具体的に言えば、25日移動平均線との乖離率、RSI、ボリンジャーバンドなどである。それぞれについて、簡単に説明しよう。

 

【利食いポイント①】 25日移動平均線との乖離率

一般に、現在の株価が25日移動平均線(以下、『25日線』と表記)と+10%以上離れている場合は、売りシグナルとして機能する。反対に-10%以上離れている場合は買いシグナルとして機能する。短期スイングにおいては、特に売りシグナルの方を重視する。25日線との乖離率を買いシグナルとして利用する場合は、カウンターフォロー(=逆張り)を意識したトレードになる。

 

要するに、底打ち反転したポイントを狙うのである。ただ、25日線との乖離率がマイナスを示す時点で、チャートは下降トレンドに移行する可能性が高くなる。短期スイングの基本はトレンドフォロー(=順張り)であることを勘案すれば、マイナスの乖離率を指標として採用することはできない。ちなみに、25日線との乖離率が+10%以上になると即座に急落するリスクが伴う訳ではない。高値を更新する銘柄が+10%以上の乖離率で常時推移している局面は良く見られるからである。

 

25日線との乖離率を指標として利用する場合は、あくまで参考程度に眺める方が良いだろう。ただ、プラスの乖離率があまりに大きくなる場合は、調整局面に突入するリスクが非常に高くなる。「過熱感」を示す指標としてはメジャーであるので、参考にしている投資家は多い。実際に、乖離率がプラスに大きく傾くと、売りが出やすくなる。したがって、そういった場合には適度に利食いを行ってポジション調整を行う方が賢明であると言えるだろう。

 

【利食いポイント②】 RSI

RSI(=Relative Strength Index 「相対力指数」)は、「過熱感」を示す指標として一般に知られている。RSIの値は0%~100%の間で推移し、50%が基準値となる。そして、通常は70%以上を売りシグナルとして、反対に30%以下を買いシグナルとして機能する。ただし、25日線との乖離率を利用する場合と同様に、短期スイングでは売りシグナルのみを参考にする。

 

チャートが上昇局面にある場合は、数値が徐々に上昇していく。そして、70%以上を明確に超えると売りシグナルとして反落する可能性が高くなるのである。ただ、25日線との乖離率の場合と同じく、高値を更新する銘柄は常時70%以上である場合が少なくない。「買われ過ぎ」を判定する指標としてはメジャーだが、あくまで参考程度に留める方が良いだろう。ただ、次に説明するボリンジャーバンドは、客観性という観点からは両者よりも利用価値は高いと言える。

 

【利食いポイント③】 ボリンジャーバンド

ボリンジャーバンドは、移動平均線を中心に上下に統計学を利用して算出された値動きに関する複数のラインを追加して構成されたテクニカル指標である。ラインは株価の一定期間のデータから標準偏差(σ=シグマ)を算出し、それを基にして移動平均線からの乖離率を±〇σで表現している。この理論では、「株価は上昇と下降を繰り返すが、概ね移動平均線に沿った値動きをする」という考えが基礎にある。したがって、移動平均線でトレンドを把握し、トレンドフォロー(=順張り)を基本にする短期スイングとの親和性は高いと言える。

 

ボリンジャーバンドでは、株価があるバンド(=帯)の範囲で収まる確率を示してくれる。移動平均線を中心にして、順に±1σ、±2σ、±3σでバンドが並んでいる。それぞれのバンドの範囲に収まる確率は、±1σ内では約68.3%、±2σ内では約95.5%、±3σ内では約99.7%である。その中でも、特に±2σのバンドを短期スイングでは重視する。一般に、株価が+2σを超えると売りシグナルとして、反対に-2σを下回ると買いシグナルとして機能する。

 

ただ、25日線との乖離率やRSIと同様に、ボリンジャーバンドも売りシグナルのみを利用する。したがって、株価が+2σを超えた場合は利食いポイントの目安とする。ちなみに、株価が+2σを超える確率は約5%である。25日線との乖離率やRSIと比較すると、客観性の高い指標であると言える。「過熱感」を表す指標として上記3つの指標で迷った場合は、ボリンジャーバンドを参考にすることを個人的にはオススメする。信頼性の高い指標として機能してくれるはずだろう。

 

以上、「過熱感」を判定する指標として代表的なものを紹介した。短期スイングであるかどうかに関係なく、「天井圏」を正確に予測することは非常に難しい。専業投資家であれば、急な潮目の変化に対応することはできるかもしれない。ただ、「頭と尻尾はくれてやれ」の格言に従うならば、安易な上値追いは避けた方が良いだろう。全ポジションを解消するとまではいかなくとも、利食いポイントではポジションを徐々に縮小させる方向で調整した方が賢明である。

 

短期スイングにおいては、小まめに利食いして着実に利益を確保することが原則である。手元にある資金量によって購入できる枚数が異なるので一概に言えないが、購入単価の中で一番高いものから順次売却していくのが基本である。安値で購入したものはトレンド転換するまで引っ張り、高値で購入したものは適宜売却するのである。株取引においてはメンタルがトレードに与える影響は思いの外大きい。ポジションを大きく取っていると、常に不安感で心が折れそうになる。メンタルにも悪影響が出る。

 

そうした状態に置かれると冷静な判断力を失ってしまいがちになる。したがって、適度に利食いすることでメンタルのコントロールを図るのである。安値で購入した場合は、特に初心者は「売った後に急騰したら嫌だな」という心理状況になりやすい。ただ、短期スイングにおいてはこうした感情は排除すべきだろう。上場銘柄だけでも約3600あり、利益を得るチャンスは他に転がっている。個別銘柄に執着するのではなく、去り際はクールにいきたい。

 

第二章 その④ チャート分析の精度を高める為にサブ的に利用するテクニカル指標について

短期スイングでは、移動平均線を用いてトレンドを把握し、下値支持線と上値抵抗線の組み合わせで「節目」を意識する。両者はエントリーポイントとロスカット基準として機能し、チャートを単純化して捉えることで判断の軸足がブレないトレードを行うことができる。

 

そして、利食いポイントは株価と25日線との乖離率やRSI、ボリンジャーバンドを参考にして設定する。特にボリンジャーバンドは移動平均線を利用し、統計学の知識を応用したテクニカル指標であり、客観性の観点から信頼性の高い指標として紹介した。メインで利用する指標としては基本的にこれらで十分であると考えている。ただ、チャートを眺める際は、より多くの指標を組み合わせた方が分析の精度は高まる。そこで、メインで使用する指標とは別に、より精度の高い分析をする際に有益な指標について簡単に紹介しよう。

 

【指標①】 一目均衡表

一目均衡表(いちもくきんこうひょう)は転換線・基準線・2本の先行スパン(=両者に挟まれた領域を『雲』という)・遅行スパンの5本のラインで構成されるチャートである。そのうち、短期スイングにおいては転換線・基準線・雲を重視する。

 

短期スイングの時間軸は基本的に「2日~2週間程度」である。比較的短い時間軸でトレードをする以上、見るべきポイントは絞った方が良い。転換線・基準線は、それぞれ移動平均線の5日線・25日線に対応するイメージである。転換線が基準線を上抜いたら好転(=ゴールデンクロス)、反対に転換線が基準線を下抜けると逆転(=デッドクロス)と言う。

 

ただ、一つ注意すべき点は、好転と呼ぶには基準線が上向きの状態、逆転と呼ぶには基準線が下向きの状態でなければならない。そして、雲は抵抗帯を表し、ローソク足が雲の上側で推移すれば強い相場、下側で推移すれば弱い相場であると判断できる。短期スイングではチャートが上昇トレンドを形成している銘柄をトレードの対象にする。したがって、一目均衡表ではローソク足が雲の上側で推移し、なおかつ好転している状態の銘柄を選定することになる。では、一目均衡表を利用する際、どこに注目すれば良いのかについて説明しよう。

 

これまで述べてきたように、上値を正確に予測することは極めて難しい。上げ足を速めるかどうかは需給が決定権を握っているからだ。需給は天候と同じく移り変わりやすい。そこで、一目均衡表を利用する際は下値目安に注目すべきである。上昇トレンドを描いている銘柄でも、株価は基本的に上昇と下降を繰り返しながら全体として緩やかに上昇していく。それを見誤ると、下降のターンで安易にポジションを取ってしまい、含み損のリスクに直面することになる。そのリスクを回避する為に、一目均衡表は大いに役立つのである。

 

一目均衡表では値動きの推移が視覚的に分かりやすい。過去のどのポイントで反転しているかが把握しやすい点で有益な指標となる。したがって、一目均衡表では過去の反転ポイントについて傾向を把握することに努めたい。一般に、上昇トレンドを描く銘柄は反転ポイントに一定の「癖」がある。その中で、反転ポイントの目印になりやすいのが、転換線・基準線・雲の3つである。最後の雲に関しては「雲上限」が一応の目安になる。短期スイングで上記の3つを重視する理由はまさに下値目安として意識されやすいからである。

 

そういった点を踏まえると、一目均衡表は下値目安を判断する際に強力なツールとなるだろう。

 

【指標②】 価格帯別出来高

「出来高は株価に先行する」と言われる。出来高は売買が成立した取引量を表し、需給のバランスを測るバロメーターとして機能する。一般に、株価が底値圏で出来高が急増すれば、買い手が増えたことを表す。反対に、高値圏で出来高が急増すれば売り手が増えたことを表す。上昇トレンドを描く銘柄は、初動の場面で出来高が急増することが多い。25日出来高平均線が一つの目安であり、これを明確に上回ると株価は上昇しやすくなる。「出来高は株価に先行する」と言われる所以である。

 

人気度を測る指標としては利用価値は高いだろう。そして、出来高を価格帯別に表記したのが価格帯別出来高である。これは、ある価格帯ごとの出来高を表し、どの程度の商いがあったのかを測ることができる。需給のバランスを見る上で役立つ指標である。見るべきポイントは非常にシンプル。現在の株価よりも上の価格帯の出来高が大きければ、そこが「抵抗帯」として意識される。反対に、現在の株価よりも下の出来高が大きければそこが「支持帯」として意識される。出来高が大きい価格帯は「心理的な節目」として意識されやすい。例えば、上昇局面で上の価格帯の出来高が大きければ、そこで売りたいと思っている人間が多いことを意味している。

 

価格帯別出来高を一つの基準にすれば、上の価格帯で出来高が大きい場合はその手前で手放すという戦略が考えられる。反対に抵抗帯を明確に上抜けると、今度はそこが支持帯として機能することになる。「心理的な節目」を突破することで、値動きが軽くなり、新たな買い手が出現しやすい状況が生まれるのである。チャートの下値支持線・上値抵抗線の組み合わせで「節目」を意識したのと同じ発想だ。価格帯別出来高は値動きの軽さや底堅さを予測するのに役立つ。特にある価格帯における需給を見るという点で、価格帯別出来高は様々なヒントを与えてくれるだろう。

 

第三章 トレードのスキルを向上させても、メンタルのコントロールをしなければトータルでは勝てない

これまで、チャート分析を通してエントリーポイントやロスカット基準の設定、利食いポイントなどについて具体例を挙げて説明してきた。短期スイングにおいては、好業績でチャート形状の綺麗な銘柄を選定する方がリスクは低い。損失に悩む投資家は、闇雲にトレードする場合が多いと言える。戦略を練ることなくトレードするのは非常にリスクが高い。ただ、実際のトレードにおいては好業績でチャート形状が綺麗な銘柄でも損失リスクに直面することはある。いくら損失リスクを低減させるように努めても、相場全体の地合いには勝てないのである。

 

個別銘柄のチャートが上昇トレンドにあっても、地合いが急激に悪化すれば容赦なく売り込まれる。「株はタイミングがすべて」と言われるのは、そういう意味なのだ。極論すれば、タイミングさえ合えばどんな銘柄でも利益を積み重ねることはできる。ただ、「言うは易く行うは難し」だろう。現実的には、やはり損失リスクを考えて低リスクなトレードを選択する方が賢明である。その上で、より重要なことを最後の章で述べていこうと思う。

 

ここまで説明してきたことの大半は、「理屈」の部分である。短期スイングにおいては、チャート分析は「本丸」だ。チャート分析がほぼ全てだと言っても過言ではない。しかし、これだけではリスク管理としてはまだ不十分である。私の持論では、トレードにおいて「理屈」でカバーできるのは全体の6割程度。相場自体が人間心理で動いている以上、理屈だけでは勝てない。相手は自然現象と同じく自分の意思でコントロールすることは出来ない代物だからだ。コントロールできるのは自分自身のメンタルだけである。要するに、残りの4割はメンタルのコントロールに他ならない。そこで、最後の章ではメンタルをコントロールする為に気を付けるべきポイントについて話をしていく。

 

【コラム】トレード日記を付けるメリット

株のトレードをする際、皆さんはトレード日記を付けているだろうか。私は株を始めた当初は付けていなかったが、大きな損失を出してからは付けるようになった。その中で感じたトレード日記を付けるメリットについて簡単に述べようと思う。まず、結論から言うとトレード日記を付けるメリットは以下の3つに集約される。

 

それぞれについて簡単に説明しよう。

 

①トレードをする根拠が明確になる

トレードをする際、ただ闇雲に銘柄を選び、適当に売買しても思うような結果は出ない。仮に結果が出たとしても、そうしたトレードはかなりリスキーだろう。どこかで足をすくわれる可能性が高い。その点、トレード日記を付けると根拠を意識するようになる。例えば、トレードをする銘柄がネット上で話題になっているのであれば、常に脳内にアラートが点灯した状態で取り組むことになる。

 

それを日記を通して「見える化」することで、トレードに緊張感が生まれるというわけだ。反対に、「見える化」しないと売買に至る一連の過程が曖昧になってしまう。根拠が不明確なので、常に不安の中でポジションを持ち、最終的な判断は他人の意見を頼りに下そうとする。これは非常に危うい。「帰るまでが遠足」と義務教育時代に言われたように、売買を一つのセットとして考えるべきだろう。

 

その為に、トレードをする際はエントリーの根拠だけでなく、手仕舞いのシナリオもセットで書く。出来れば、何個かシナリオを用意したい。そうすれば、自分が当初想定したシナリオと異なる局面に至った際も、狼狽せずに安心して対処できるようになる。

 

②失敗が可視化される

『失敗は成功の母』と言われるが、これはトレードにおいても当てはまる。特にトレードの場合は失敗には共通点が多い。私自身も過去の失敗例を振り返ると、同じ傾向を示している。

 

この失敗はその人自身によって異なる。それを可視化することで自分専用の「失敗集」として貴重な資料となるのだ。結局は、この失敗から改善点を見出し、それを次に活かすように戦略を練ることで徐々に自分のトレードができるようになる。「失敗の可視化」はトレード日記を付ける最大のメリットと言えるかもしれない。

 

③反省材料として次に活かせる

これは②の内容と一部重複するが、トレードスキルの上達は自分の失敗を意識し、それを一つずつ克服することで初めて達成される。この過程をなおざりにすると、同じ失敗を何回も繰り返すことになる。そうならない為にも、トレード日記を付ける際は失敗内容を書き記し、それに対する改善策も併せて明記しておく。

 

そして、その改善策が有効に機能したかどうかを後で振り返るのである。これは非常に地味で苦痛な作業であるが、地道に積み重ねていくと自分のトレードの質が高まっていくのが実感できるようになる。また、他人の意見に気持ちが揺らぐことがなくなるので、ストレスも軽減される。

 

以上、3つのメリットについて説明したが、他にもトレード日記を付けるメリットは色々とある。日記を付ける際は、紙媒体でもウェブ媒体でも何でも良い。後で振り返られるように情報が整理できることが望ましい。是非、試してみて欲しい。ある程度の月日が経てばその効果を実感できるはずだ。

 

第三章 その① 他人はすべて「敵」であり、甘い言葉に騙されてはいけない

株は情報戦である。有益な情報をいかに短時間で集め、それをトレードに反映させるべきか。そこに神経を使うのは当然と言える。しかし、自分ひとりで情報を集め、それを精緻に分析するには限界がある。ブログ「Kabusky BLOG」での関連記事「ツイッターでフォローすべき【個人投資家の特徴】とは?」では、情報収集の一例を提示している。そこでは、客観的なデータを基に、メリットとデメリットの双方に触れつつ、バランス感覚の優れた意見を発信する投資家をフォローすべきであるということを述べた。自分の能力には限界がある。他の優れた人間の考察力を参考にするという姿勢はトレードにおいては必須であると言える。それと同時に、他人に依存し過ぎないという姿勢も重要である。

 

ツイッターでは、様々な個人投資家が積極的に情報発信をしている。中には、いわゆる「当たり屋」と呼ばれる人間も存在しており、特定銘柄についてポジティブな内容ばかりを呟いている。情報リテラシーが備わっていれば問題はないが、特に初心者は彼らの言う事を鵜呑みにしやすいと言える。これはある意味仕方のないことかもしれない。初心者は株に関する知識と経験が圧倒的に不足している以上、他人の発信する情報が正しいのか否かを適切に判別することが難しいからである。「当たり屋」の推奨する特定銘柄が実際に急騰する場合があるので尚更。「当たり屋」の提供する銘柄情報を参考にするのは構わない。株は「美人投票」であり、人が集まる銘柄は投資効率が高い側面を持っているからである。ただ、そういった銘柄は人気離散した場合は往々にして悲惨な状態になる。

 

これまで述べてきたように、実際にトレードする際は様々な角度から色々な指標を参考にして総合的な判断を下すことになる。このプロセスは慣れるまでは非常に面倒な作業である。その点、「当たり屋」の発信する情報を頼りにトレードするのは精神的にも楽だろう。銘柄選定は彼らに任せ、目標株価を提示されれば「それまで何もしなくても大丈夫だ」などと思って安心する。ただ、実際のトレードにおいては株価が自分の思い通りに動く展開は頻繁には起こらない。様々な要素が複合的に絡み合って、当初は想定していなかった値動きを見せることはよくある。それに、「当たり屋」も慈善事業で情報発信しているわけではない。彼らは小口の個人投資家に自分の推奨する銘柄を買ってもらうことに心血を注ぐ。いわゆる「提灯買い」を期待して積極的に情報発信しているのである。そのことを忘れてはならないだろう。

 

買う買わないの最終的な決定権は自分自身にある。「当たり屋」の情報を頼りにする場合も、あくまで参考程度に留めておくべきだろう。株の世界でWin-Winの関係を期待するのは完全な誤り。その証拠に、「当たり屋」が推奨した銘柄が人気離散して苦杯をなめるのは小口の個人投資家なのだ。投資は自己責任なので、彼らを擁護することはできない。トレードは銘柄を購入し、売却するまでがワンセット。他人の意見を盲目的に信じ、自分で思考することなく利益だけ得ようとするのは都合の良い発想だろう。他人はすべて「敵」であり、意見を参考にしても鵜呑みにすることは慎みたい。極論すれば、利用すべきところは利用し、自分だけ助かれば良いという厳しい態度で臨む姿勢も時には必要である。実生活でそれを実践するのは大いに問題はあるが、株の世界では高尚な倫理観は時として邪魔になる。バランス感覚の優れた投資家を参考にせよ、というのはそういった発想から生まれた考えなのである。

 

【コラム】定期的に出現する「胡散臭い」投資系アカウントについて

私がツイッターで株アカウント(@kabu_ism)を開設して5年になる(2020年11月時点)。その間に多くの胡散臭い投資系アカウントを目撃してきた。中でも特に「胡散臭い」と思うのは、「金持ち風」をアピールして注目を集め、実際はフォロワーを単なる「カモ」としか思っていないようなアカウントの存在である。こうしたアカウントはツイッター上での「魅せる演出」に余念がない。高級時計や高級車の画像をこれ見よがしにアップし、トレードも「常に勝っている風」を装うのが特徴的である。以前、オプザイルというバイナリーオプションの情報商材を高額で販売する詐欺集団が話題になった。

 

彼らはツイッター上で札束や高級時計の画像をアップし、それに魅了された人たちを「カモ」として、高額な情報商材を購入させるように誘導していた。実は、札束と言っても実際はダミーのニセモノであり、ネット通販で格安で購入できる粗末な代物であった。彼らが「金持ち風」をアピールするのはハロー効果を狙ったものだと思われる。また、彼らはトレード履歴の画像もアップしていたが、これも実際は「デモトレード」であり、トレードスキルも素人同然であったのである。実は、これを見抜いたのはある投資系アカウントであり、彼が自警団的な役割を担って詐欺集団の手口を暴いたのである。

 

これが一つの要因となって、詐欺集団の存在がテレビの情報番組等でも取り上げられるようになった。被害者の多数が若者であるということで大きな問題にもなった。やはり、投資について事前知識がないと、詐欺集団の術中にはまる危険性が高まってしまうのだろう。ツイッター上では定期的にこうした「胡散臭い」投資系アカウントが出現する。最近でも、経歴詐称が強く疑われるとある人物が話題になったが、経歴詐称だけでなく彼のこれまでの発言の大半が虚偽であることも明るみになった。彼は「実名顔出し」で色々と発言していたが、「実名顔出し」が発言内容の信ぴょう性を担保するなどということはもはや神話に近いものになったように思う。

 

詐欺的行為を働く人間は本気で騙しにかかる。最近ではその手口も巧妙になってきたので、経験値の高い投資家であっても騙されやすくなっている。ツイッター上だけで特定人物の発言の真偽を判断するのは現実的には難しい。ただ、その人物に対して何か疑わしい事象があった場合には、すぐに距離を置くことをオススメする。一度でも虚偽の発言や経歴の偽装が発覚した場合、その人物に対する評価は回復不能なまでに低下したと考えて良い。虚言癖のある人間は常習性が高く、今後も偽りの発言をする可能性が極めて高いからだ。今自分が盲信しようとしているネット上の人物が本当に信用に足る人物なのか、改めて考えてみよう。

 

第三章 その② チャートが崩れたら即退散

チャートが崩壊しても逃げない投資家は思いの外多い。よく「現物だから安心だ」などという言葉を耳にする。確かに、信用取引をしている場合は追証リスクは常に付きまとう。特に保有銘柄が急落した場合は現物よりも損失額は大きくなる。ただ、現物であれ、信用取引であれ、資金拘束をされるという点では同じ。また、含み損を損失に勘定しない投資家は多いが、これも誤りだろう。損失は確定させなければ実現損にはならないが、放置していても状況が好転することはあまりない。

 

もちろん、後に含み損が解消され、大きな利益を得られるという確証がある場合はそのままでも良いだろう。むしろ、戦略的に買い増しを進める投資家もいる。ただ、そういった戦略はあまりオススメしない。特に、短期スイングにおいてはリスク管理が最も重要である。チャート分析を重要視する以上、チャートが崩れる兆しが見えた時点で即退散である。含み損はメンタルにも悪影響を及ぼす。判断力を明晰な状態に保つ為にはメンタルに悪い要素はできる限り取り除いた方が良いだろう。仮に同じ銘柄にエントリーする場合は、下落が落ち着いてからでも十分に間に合うのである。

 

優れた投資家になる為には、描いたシナリオに相違があった場合に即座に対応できるようにならないといけない。つまり、ロスカットを適切に行うということに尽きる。損失リスクを拡大してしまう投資家の多くは、ロスカットをためらってしまうことにある。ロスカットは「悪」ではない。短期スイングに関係なく、利益とは別に許容する損失リスクも予め計算しておいた方が良いだろう。利益ばかりに目が向くと、ロスカットすることに抵抗を覚える。しかし、投資においてはトータルで勝つことが大切。投資で常勝することを望むのは現実的ではないのである。

 

「損小利大」という言葉があるが、損失は最小限に留め、利益はできるだけ伸ばすのが投資のセオリーである。チャートが崩壊した銘柄が即座に値を戻す光景はめったにない。大抵はジリ下げか、戻しても途中で失速する場合が多い。短期スイングでは、「過熱感」を示す指標などを参考に、適度に利食いを行う必要性について述べた。これは突発的な地合いの悪化によって、大きな損失を被るリスクを最小限に抑える為の戦略でもあるのである。利食いを適度に行っていれば、仮に損失が出ても致命的なダメージを負うことはない。チャートが崩壊したら即退散、という言葉は非常に現実的な振舞いなのだ。

 

第三章 その③ 「塩漬け」をいかに防ぐか?

株取引をしていると、常に「塩漬け」のリスクが付きまとう。「塩漬け」とは、購入した銘柄が値下がりし、損切りしようにも含み損が大きい為、切るに切れない状態のことを言う。これは特に投資の初心者が陥りやすい。「塩漬け」の銘柄を抱えると、日常生活にも悪影響を及ぼしてしまう。常に保有銘柄の値動きが気になり、気付いたらスマホで証券口座にアクセスし、現状を確かめる。期待通りの値動きをしていないと落胆する。「どうにか買値まで戻って欲しい」と祈りながらも、思い通りの展開にならないと徐々にイライラしてくる。負のスパイラルである。

 

株価の値動きなどは、自然現象と同じく自分の意思ではコントロールできない。もちろん、自然現象と異なり株価の行く末を左右するのは群集心理である。人間が関わっている以上、人為的要素が絡むのは大いにあるが、自分の意思でコントロールできないという点では同じだろう。株式投資は潮目の変化に敏感にならないといけない。それは相場全体の流れなのか、それとも個別銘柄の値動きなのか、取引の対象としているものによって異なる。しかし、流れを読むという行為は株式市場で上手く立ち回る為には必須の能力である。

 

ただ、初心者の頃はこの「流れを読む」ということがどうしてもできない。単純に知識と経験が不足しているからである。しかし、何とかしてこの能力を養成せねばならない。初心者の場合は優秀な投資家の投資に対する考え方を模範にし、徹底的に真似することが近道になる。模範にする投資家が、どのようにその銘柄を見ているのか、また何故そのような判断をしたのか、について自分なりに分析して欲しい。それを自分の投資スタイルにフィードバックすると、色々な「気づき」が見つかるだろう。そして、徐々に自分に合うようにカスタマイズしていくのである。

 

実は「塩漬け」については、上記の「流れを読む」のに加えて、「感情のコントロール」も重要になってくる。人間は損をした時の方が強く記憶に残る。だから、仮にそれまでに大きな損失を出していたとしたら「次こそは」という気持ちに傾きやすくなる。「塩漬け」になってしまうのは、エントリーするタイミングを誤ってしまった場合が多い。これはスキル不足に起因する面があるが、それ以上に勝負を急いでしまった面もあるだろう。

 

「塩漬け」を防ぐには非常にシンプルな思考で対処できる。それは、「分からないものには手を出すな」と「チャートが崩れたら逃げろ」である。チャートが上昇トレンドを描くにはある程度の時間を要する。一方、反落してチャートが壊れるのは一瞬。同じトレンドでも時間的格差は大きい。一部例外はあるが、大抵は原則通りの動きを示す。この事実を知っているだけでも「塩漬け」を防ぐことはできるだろう。もちろん、一銘柄に資金の全てを投入すべきではない。投入する資金量の多寡によって、感情のコントロールの難易度は変わるからである。最悪の結果にコミットしない為にも、資金管理にもくれぐれも注意しよう。

 

第三章 その④ 時には休むべし

いよいよ、最後の項目である。これまで、メンタルをコントロールする為には他人の提供する情報を盲信しないことや、ロスカットを軽視しないことが重要であると述べた。それに加えて、時に相場から離れることを最後にオススメする。「休むも相場」という言葉のように、よく分からない局面などではあえて勝負しないという判断は必要である。毎日のように相場に臨んでいると、物事を見る際の視野が狭くなってしまう。短期スイングにおけるモットーは、「勝てる局面にだけ勝負すること」である。

 

勝てる局面とは、あきらかに相場の方向性が明確な場合を指す。相場全体が上げ相場であれば、どんな銘柄でも値上がりする。上昇過程であれば短期スイングでも大きな利益を積み重ねることができる。逆に総悲観ムードが市場全体を覆っている場合は、相場から一旦離れて状況の推移を見守るのである。個別銘柄に取り組む際と同様に、底値を律儀に追うのは控えた方が良いだろう。底打ち反転した状況からエントリーしても十分に間に合う。相場を休む機会を適宜設けることによって、冷静に状況を眺めることができるのである。潮目を読む漁師のように、好漁場だと判断できる場合のみ参戦するのである。

 

「休むも相場」を実践することで、投資における勝率は飛躍的に向上する。リスク管理というのは、資金管理のことばかりを言うのではない。不確定要素が多くあり、相場の成り行きが予想できない場合は静観の立場を守るというのもリスク管理の一つなのだ。個人投資家の9割が勝てないのは、メリハリをつけて相場に臨んでいないことにある。損失をゼロに抑えることは不可能だが、致命的なダメージを負わない限り、相場で勝つチャンスはいくらでもある。そういったチャンスを逃さない為には、「休むも相場」という格言を守るメリットは大きいと言える。

 

終わりに

今回の記事では「短期スイング概論」と題して、短期スイングをメインに据えたトレード手法について述べた。ここで紹介している知識に目新しいものはない。どれも一度は目にする理論や考え方である。ただ、投資においては小難しい理論は不要と考えている。現に、シンプルな戦い方でも十分に利益を積み重ねることは可能である。「困難は分割せよ」というデカルトの有名な言葉がある。複雑に見える現象でもシンプルに捉えれば解決策は見えてくる。

 

株取引においても同様で、チャート上によく分からないラインを複数引くよりも、高値と安値に着目した水平なラインを目安に戦略を練る方が見るべきポイントは絞られる。水平のラインを活かす意味合いでも、業績面・チャート面からも上昇トレンドを描いている銘柄を選定することをオススメする。それに加えて、テクニカル指標を参考にする場合も基本的な知識だけで事足りる。

 

参考にすべきポイントは述べてきた。後は、実際にトレードをする中で実践を積み重ねるだけである。トレードのスキルは場数を踏むことで根本的に鍛えられる。今回の記事で提示した方法論はあくまで一例である。もちろん、効果的で現実的な手法であると自負しているが、今後の長い相場生活の中で自分なりにアレンジしていくことも同時に望んでいる。本記事がその一助となれば幸いである。

 


ブログランキング
  • この記事を書いた人
  • 最新記事

Kabusky

『Kabusky BLOG』の管理人 / ブログで扱うテーマはバラバラ。真面目と不真面目が混在する統一感のないブログ。

-オピニオン, 株式投資

Copyright© Kabusky BLOG , 2024 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.